堀大輔氏の一週間ライブの顛末を見届けてからというもの、なんだか気になって過去の動画や関連動画をあれこれと見返してしまった。
その中で、個人的にすごく考えさせられる出来事があった。例の一週間ライブ中、堀さんが整体師のうちやま先生のところでヘッドマッサージを受けたくだりだ。
映像を見る限り、堀さんはいびきのような音を立てており、どう見ても寝ているように見えた。
そして起きた直後、スタッフから「あと1分で30分でしたよ、というコメントが来ています」と振られると、堀さんは一瞬きょとんとして聞き返した後、「あ、あぁ、別に、まぁ、寝てる回、寝てるのでいうと、マイクロスリープで10回ですけどねぇ、はい。」と返した。
つまり、この場面で確認できる限り「マイクロスリープ10回」という数字を最初に出したのは、他でもない堀さん自身だったのだ。
その後、うちやま先生はこの場面について「寝てしまった」という趣旨の動画を公開する。しかしその動画はすぐに削除され、改めて謝罪動画が公開された。
そこで彼は、「動画の最中に寝ているかもというような表現をしてしまった」ことを事実と異なる内容として謝罪し、「実際にはマイクロスリープが10回ほど起こったものだと、僕も感じています」と説明した。
さらにその後、堀さんとうちやま先生の間で電話のやり取りがあり、いったんは「お互いに納得できる形で終えた」とされたらしい。
ところが、堀さんが自身のライブでその電話について「内山さんがキレていた」「僕がなだめた」といった趣旨の話をしたことで、うちやま先生側が「さすがに看過できない」「誠意がないならこちらも相応の対応をとる」と表明する事態に発展した。
この時点ですでに人間関係の摩擦として十分複雑なのだが、事態はさらに面白い方向へ転がる。
後日、ドラゴン細井さんと堀さんが「SOXAI RING」のデータをスマホで一緒に確認する場面があった。
細井さんが「9月10日の14時19分から25分に睡眠判定が出ている」と指摘すると、堀さんは「これが、あの、マッサージのアレですね」と答える。
すかさず細井さんが「寝てたんでしょ?!」と突っ込むと、堀さんは「……ということですね」と肯定し、あろうことか「私は寝てたって言うてますけどね」とまで言った。
細井さんがさらに「気持ち良すぎて寝たんですね?」と念押しすると、「はい。そうそうそう。だって、ヘッドマッサージってそのために行くんじゃないの?」とあっけらかんと答えたのだ。
……だったら、うちやま先生が最初に「寝てしまった」と表現したことの、いったい何が「事実と異なっていた」のだろうか。
もちろん、「あと1分で30分」というスタッフの時間の指摘が誤っていた可能性はある。施術そのものが25分程度だったのなら、「29分寝た」という表現は訂正されて当然だ。
でも、「29分寝た」ことと「寝た」事実はまったく別の話である。後になって堀さん本人が「私は寝てたって言うてますけどね」と認めている以上、最初の「寝てしまった」という表現のどこに謝罪するような誤りがあったのか、私にはさっぱり分からない。
極めつけは、一連の出来事があった後に公開された堀さん自身の振り返り動画だ。
彼はそこでもう一度、こう説明したのである。
「整体師の方もおっしゃられた通り、10回ぐらいのマイクロスリープ」
ここで私は、盛大に「あれ?」となった。
「10回」という数字を最初に言ったのは堀さんだったはずだ。
それを受けて、うちやま先生が「10回ほどだったと僕も感じています」と謝罪した。
そして最後には、その言葉が「整体師の方もおっしゃられた通り」という形で、まるで第三者の客観的な見解のように堀さんのところへ戻ってきている。
堀さん:「マイクロスリープで10回ですけどね」
↓
うちやま先生:「10回ほどだったと僕も感じています」
↓
堀さん:「整体師の方もおっしゃられた通り、10回ぐらいの……」
見事に情報が一周している。
もちろん、その間に両者の間でどんな生々しいやり取りがあったのかは知る由もない。「圧力があった」だの「言わせた」だの、見えない部分を決めつけるつもりもない。
ただ、この一連の流れを見ていて強く痛感したことがある。
人の発言というものは、一度口から外に出ると自分の手を離れて一人歩きしてしまうということだ。その場を収めるために何気なく言った一言でも、後になってまったく別の文脈で「専門家もこう言っている」「第三者も認めている」という、相手側の都合の良い材料として使われてしまう恐ろしさがある。
そう考えると、一週間ライブ最終日における「株式会社SOXAI」の対応が、いかに異常なほど研ぎ澄まされていたかが改めて見えてくるのだ。
私はライブを見ていたときから「SOXAIさん、話方が丁寧だな」と感じていた。しかし、うちやま先生の一件を見た後で振り返ると、あれはもう企業のリスク管理として「奇跡のような神対応」だったのではないかと思えてくる。
SOXAI RINGによる一週間の測定では、最長の連続睡眠は「29分」だった。
そこで堀さんは、「29分だったんだから、ピタリ賞ではないですけど優秀ですよね。ぜひ優秀って言ってください」という趣旨の言葉をSOXAI側に求めた。
普通の大人なら、その場の空気を読んで「そうですね(笑)、優秀ですね」くらいは言ってしまいそうな場面である。相手の顔を立てるだけの、ほんの軽い相槌のつもりで。
ところがSOXAI側は、決してその言葉を口にしなかった。
「30分を目標とされていたのであれば、1分差は小さいですね」という、事実関係の説明にとどめたのだ。
これ、ものすごく大きな違いである。
SOXAIが言ったのは、「29分という測定値は、本人が設定した30分という目標値に近い」という事実だけ。「30分睡眠は優秀である」という価値判断には一切踏み込んでいない。
もしあそこで「30分睡眠は優秀ですね」と言ってしまえば、その場面だけを切り取られ、「SOXAIも認めた30分睡眠!」という宣伝材料にされてしまうリスクがある。でもSOXAIは、その言質を絶対に渡さなかった。
さらに担当者は、自分自身については「6時間未満の日と6時間以上の日では、明確にパフォーマンスが分かれるタイプ」だと語り、堀さんに対しても「6時間寝た場合の自分と比較してみてはどうか」と提案までしている。
これによって、「SOXAIも短時間睡眠を推奨している」という曲解の余地を完全に塞いでいる。
さらにすごかったのは、「ライブ前にも堀さんの測定データがあります」とSOXAI側から明らかにしたことだ。
勝手に公開はしない。中身について憶測もしない。ただ、「以前のデータもありますけど、出しますか?」と本人に判断を委ねた。
堀さんは「いや、いいですいいです」としどろもどろになりながら断った後、小声で「遊んだところがあると思ってください」と言った旨を呟いた。SOXAIは秘密を暴露して相手を攻撃したわけではない。ただ、「ライブ以前にもデータが存在する」という事実だけを、公開の場にきっちりと残したのだ。
そして担当者は、最後まで顔を出さなかった。
意図的かどうかは分からないが、結果として担当者の顔写真を切り抜き「SOXAIの担当者も推薦!」といった広告的な見せ方に利用されることも未然に防いでいる。
ここまで見ると、SOXAIの姿勢は最初から最後まで一本の太い線でつながっている。
堀さんを否定しない。戦わない。でも、相手の理論に「認証」も与えない。
測定した事実は説明するが、測定していないことは言わない。相手から「優秀と言って」と求められても、価値判断は引き受けない。自社社員の顔まで含めて、必要以上に「相手の物語の登場人物」になることを周到に避けている。
つまり、協力はするが、決して一体化はしない。
この絶妙な距離感のコントロールは、企業対応として本当に見事だと言うほかない。
そして今回、もう一つ考えさせられたことがある。
人間というものは、そもそも完璧ではない。記憶も間違えるし、判断も間違える。今日まで正しいと信じていたことが、新しいデータによって明日には180度変わることだってある。
だから、「以前と言っていることが違う」こと自体は、本来そんなに悪いことではない。むしろ、新しい事実が突きつけられているのに絶対に考えを変えない人の方がよっぽど危険だ。
大切なのは、「訂正できること」なのだと思う。
「以前はAだと思っていました。でも、新しいデータを踏まえるとBだと考えます」
これなら何の問題もない。むしろ知的に誠実で健全だ。
ただし、一つだけ問題がある。
本人の考えがAからBに変わっても、周囲の人の頭の中まで自動的にアップデートされるわけではないのだ。
昨日までAだと聞いていた人は、Aを前提に物事を考え、判断し、人に説明している。そこで突然Bだと言い出されると、「え? Aじゃなくなったの?」「いつから変わったの?」「これまでの前提はどうなるの?」という認知的な負担が周囲に発生してしまう。
だからこそ、「訂正」と同時に「謝る」ことが大切なのだと、今回ものすごく腑に落ちた。
謝罪というと、「悪いことをした人が頭を下げる」という道徳的な行為のように思われがちだ。でも、それだけではない。
「以前はAと説明していましたが、確認したところBが正しいと分かりました。以前の説明で混乱させてしまい、すみません」
そう言ってもらえれば、周囲は「ああ、じゃあこれからはBとして扱えばいいのね」と、自分の頭の中をスムーズに更新できる。
訂正とは、情報の更新。
謝罪とは、その更新によって周囲に強いた認知的負担への応答。
そう捉えると、社会が回っていくためのとても合理的な仕組みに見えてくる。
逆に、「Aも間違いではない」「Bとも矛盾していない」「Aと受け取った側にも問題がある」「そもそも私はAにはこだわっていない」などと自己弁護を始めると、どうなるか。周囲はAとBの両方を頭に残したまま、「じゃあこの人は結局、今何を言っているんだ?」と、延々と整合性を探し続けなければならない。
たった一つの間違いを認めない人間のために、周囲の人間全員が、その人の世界観の「つじつま合わせ」の作業に強制参加させられてしまうのだ。これは、とてつもなく疲れる。
だから、長く社会で信頼される人というのは、「絶対に間違えない人」ではなく、「間違ったときに、自分で訂正できる人」なのだと思う。さらに言えば、どこが、なぜ、いつから変わったのかを自分で説明できる人。そういう人なら、周囲は安心してその人の「最新版」を信じることができる。
今回のSOXAIの対応が圧倒的に強かったのも、結局はここなのだろう。
自分たちが分かっていることと、分かっていないことを明確に分ける。測定値(事実)と価値判断を分ける。本人の主張と自社の見解を分ける。
だから後から読み返しても、「SOXAIは結局、どっちの味方だったんだ?」と混乱することがない。最新版へのアップデートどころか、最初から最後までバージョン管理が完璧なのである(笑)。
ライブを見ていたときにも「SOXAIさん、うまいな」と思っていたが、うちやま先生の一件を時系列で追った後では、その評価がさらに一段跳ね上がった。株式会社SOXAI、まさに奇跡のような神対応だったと思う。
堀さんがどんな剛速球や変化球を投げ込んできても、否定も肯定もせず、測定会社として答えられる範囲のストライクゾーンだけを正確に打ち返す。余計な言質は残さず、相手を無駄に怒らせることもない。でも、自社の立場とブランドだけは絶対に傷つけさせない。
なんであんなに最後まで冷静で、頭が冴え渡っていたんだろうか。
……あ。
そういえば担当者さん、「私は6時間以上寝たほうがパフォーマンスがいいタイプなんで」って言ってたわ。
そりゃあ、頭も冴えてるわけだ(笑)。

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