雑栗氏とあきさんの動画では、世の中の九割は支配者に誘導され、残りの一割だけが自由に生きている、という話が出てきた。
支配者は、全員を完全に同じ人間にしようとはしないらしい。
なぜなら、一割の自由な人たちは、新しい文化や発想を生み出すからだという。
その一割まで押さえ込めば、社会は停滞する。
また、あまり強く締め付ければ反発が起きる。
だから支配者は、九割を管理しながら、一割にはあえて自由な余白を残している。
ここまで聞いて、私は少し混乱した。
それは、本当に悪い支配者なのだろうか。
九割の人に共通の価値観や生活の見通しを与え、巨大な分業社会を安定して動かす。
農業、物流、建設、医療、水道、電気、通信、治安を維持し、多くの人が明日も今日とだいたい同じ生活を送れるようにする。
そのうえで、全体を一色に染めず、異論を唱える人や、新しい文化を作る人が活動できる余白まで残している。
反乱が起きない程度に自由を確保し、社会が停滞しない程度に多様性を保つ。
ずいぶん高度な統治である。
人類を壊そうとする邪悪な存在というより、秩序、創造性、多様性、逃げ道の配分まで考えている、恐ろしく有能な社会運営者に見えてくる。
しかも、その「自由な一割」も、九割が維持する社会の外で生きているわけではない。
動画を配信するための通信網があり、サロン会費を受け取る決済制度があり、オフ会へ移動する鉄道があり、安心して一対一の鑑定をするための治安がある。
一割の人たちは、支配者の社会から脱出したというより、支配者が用意した安全な余白の中で、支配者を批判しているようにも見える。
もちろん、今の社会が完璧だとは思わない。
過酷な労働も、不公平も、差別もある。
社会の仕組みを批判し、改善しようとすることは必要だ。
でも、現在の仕組みそのものを「支配だから悪い」と否定するなら、それに代わる設計図も必要になる。
食料は誰が作るのか。
働きたくない仕事は誰が引き受けるのか。
意見が対立したとき、誰が決めるのか。
約束を破った人へ、どう対応するのか。
水道や電気を、毎日止めずに維持する責任を誰が負うのか。
その答えが「個神がゆるくつながる」だけでは、足りない。
趣味の集まりなら、ゆるくつながればよい。
しかし、水道管までゆるくつながったら漏水する。
支配者を悪く描こうとすればするほど、その支配者が社会をどれほど精巧に運営しているかが明らかになってしまう。
そして、それに代わる「丸い社会」の設計図の薄さも、同時に見えてしまう。
今回の話の中で、私にはそこがいちばん面白かった。
世界を操る支配者を発見したはずなのに、よく見ると、その人物がいちばん真面目に人類社会の運営を考えていたのである。

コメント