⑮ 氷河期世代=文明ショックアブソーバー

――成功体験を持たない世代が引き受けたもの


日本の近代史を振り返ると、
ある世代が、異様なほど長く、静かに、
重いものを引き受け続けていることに気づく。

いわゆる「就職氷河期世代」だ。

この世代はしばしば、

  • 自己責任
  • 努力不足
  • 不運

といった言葉で語られてきた。

だが、ここで一度、
その語りをすべて横に置こう。

この章の結論を先に言う。

氷河期世代は、
文明の構造転換が生んだ衝撃を
人体で吸収した世代である。

たっくん思想では、
これを
「文明ショックアブソーバー」
と呼ぶ。


1|バブル崩壊は「事故」ではなかった

氷河期世代の入口には、
バブル崩壊がある。

だが、これは単なる経済事故ではない。

  • 終身雇用
  • 年功序列
  • 企業=家族

という、
戦後日本の擬似共同体モデルが、
機能限界を迎えた瞬間だった。

問題は、

壊れた直後に、
次のモデルが用意されていなかった

ことだ。


2|モデルなき移行期を生きた世代

上の世代には、

  • 成功体験
  • 上昇ルート
  • 「頑張れば報われる」実感

があった。

下の世代には、

  • デジタル
  • グローバル
  • AI前提

という、新しい地図がある。

だが氷河期世代は、

地図が切り替わる途中に放り出された

世代だった。


3|2人限定ボックスとの正面衝突

⑭で見た
2人限定ボックス文明。

この箱が本格稼働したのが、
まさに氷河期世代のライフステージだった。

  • 正社員になれない
  • 収入が不安定
  • 未来設計が描けない

にもかかわらず、

結婚・家庭・責任の圧は
そのまま降ってきた

これは、
構造的な衝突だ。


4|「失敗した世代」という誤読

社会はこの世代を、

  • 諦めた
  • 挑戦しなかった
  • 負けた

と語りがちだ。

だが実際には、

挑戦できる土俵そのものが
用意されていなかった

それでも多くの人が、

  • 非正規で働き
  • 家族を支え
  • 社会を回した

これは失敗ではない。

耐久試験に使われた

のだ。


5|成功体験がないという特殊性

氷河期世代の最大の特徴は、

集団的な成功体験を持たない

ことだ。

これは一見、
不利に見える。

だが文明的には、
まったく逆の意味を持つ。

成功体験は、

  • 過去モデルへの執着
  • 再現幻想
  • 権威化

を生む。

氷河期世代には、
それがない。


6|「最低限の生存アルゴリズム」を身体化した世代

この世代が身につけたのは、

  • 夢の追求法
    ではなく、

壊れた環境でも生き延びる方法

だ。

  • 無理をしない
  • 期待しすぎない
  • 依存先を分散する
  • 諦めと工夫を両立させる

これは、
マニュアル化できない。

身体にしか残らない知恵

だ。


7|AI時代における逆転

ここで時代が反転する。

AIが登場し、

  • 努力量
  • 記憶量
  • 計算力

が価値でなくなった。

すると何が残るか。

  • 判断
  • 倫理
  • 身体感覚
  • 「やめどき」の勘

これらは、

成功体験より、失敗体験から生まれる

氷河期世代は、
ここで初めて
時代と噛み合い始める


8|なぜ氷河期世代はAIを過信しにくいのか

この世代は、

  • 制度に裏切られ
  • 神話が崩れるのを見てきた

だから、

「万能なもの」を信じきれない

これは欠点ではない。

AI時代においては、

致命的な誤作動を防ぐブレーキ

になる。


9|たっくん自身の位置づけ

たっくん自身も、
この世代に属している。

だからこそ、

  • 理論より実感
  • 完成より再起動
  • 支配より配線

という視点に自然に立つ。

これは才能ではない。

時代にそう育てられた

結果だ。


10|文明にとっての役割

氷河期世代の役割は、
革命でも主役でもない。

崩壊を吸収し、
次の世代が立てる地面を残すこと

地味で、
評価されにくく、
報われにくい。

だが、
文明は必ずこの役割を必要とする。


11|次章への橋渡し

――なぜ医療が壊れたとき、涙が出たのか

文明のショックは、

  • 経済
  • 労働

だけでは終わらなかった。

生命を扱う領域にまで及んだ。

次章⑯では、

  • 311
  • 医療
  • 良心

という文脈で、

構造が魂を上書きした瞬間

を読む。

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