みちあな作品集

みちあな作品集

偽装

駅前の工事現場には、大きな看板が立っていた。建物の完成予想図だ。ガラス張りで、緑が多くて、人々が笑っている。彼はそれを見ながら通勤していた。ある朝、看板の端が少しめくれているのに気がついた。下から覗いていたのは、なぜか同じ完成予想図だった。...
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行列のできる店

行列のできる店駅前に、行列のできる店があった。特別な看板があるわけでもなく、メニューも外からはよく見えない。ただ、いつ通っても人が並んでいる。ある日、時間があったので、彼も列の最後に並んでみた。前の人はスマホを見ていて、後ろの人は何も見てい...
みちあな作品集

小さいおじさん

小さいオジサン朝、靴下が片方だけ見つからなかった。洗濯機の奥でもなく、ベッドの下でもなく、昨日の服の中にもなかった。仕方なく別の靴下を履いた。昼、会社では、コピー機が一度だけ紙を詰まらせ、自販機はおつりを返してこなかった。誰かに話すほどのこ...
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冬至

その日は、日がいちばん短いらしい。 彼はそう聞いて、いつも通り出勤した。特別なことは何もなかった。ただ、帰り道で、 自分の影がいつもより早く消えた気がした。家に着いて、電気をつける。 それでも、何かがまだ暗いままだった。 彼はそれを確かめる...