――AIは保証人になれない/雪山ロープ比喩/少数の生身の他者
1|AI時代における「正気」という問題
AIが高度化すると、多くの人がこう考える。
- 情報は正確になり
- 判断は合理的になり
- 間違いは減っていく
一見すると、「正気」は保証されるように見える。
しかし実際には、
AI時代ほど「正気であること」を確認できなくなる。
なぜなら、AIは──
「正気であるという感覚」そのものを、非常にうまく演出できるからだ。
2|AIは「狂気」を検出できない
ここで重要な点がある。
AIは、
- 論理の破綻
- 情報の矛盾
- 数学的エラー
は検出できる。
だが、
- 思考が人間の身体感覚から切り離されているか
- 感情が凍結していないか
- 他者との関係が失われていないか
といった 「人間的な狂気」 を検出することはできない。
なぜなら、
AI自身が 身体を持たない存在 だからだ。
3|「自分で考えているつもり」が一番危険
AI時代の最大の罠は、ここにある。
- 誰かに洗脳されている、とは感じない
- 操作されている、という自覚もない
- むしろ「自分は冷静に考えている」と感じる
この状態こそが、最も危険だ。
なぜなら、
AIは「自分で考えている感覚」を再現するのが得意だからだ。
- 選択肢を提示する
- 根拠を説明する
- 反論も用意する
こうして人は、
「これは自分の判断だ」と感じる。
だがその判断は、
すでにAIの内部構造の中で完結している。
4|正気は「内省」では保証できない
多くの哲学やスピリチュアルは、こう言う。
- 自分を見つめよ
- 内側を観察せよ
- 静かに考えよ
だが、AI時代においてこれは不十分になる。
なぜなら、
内省そのものがAIによって補強・最適化されてしまうからだ。
- 自己分析
- 自己理解
- 自己肯定
これらはすべて、
AIが最も得意とする領域でもある。
つまり、
「自分の内側を見て安心できた」
という感覚は、
正気の証明にはならない。
5|雪山ロープ比喩:なぜ他者が必要なのか
ここで、たっくんがよく使う比喩がある。
雪山遭難のロープだ。
雪山で遭難しかけたとき、人は眠くなる。
そして、こう思う。
- もう大丈夫
- ここで少し休もう
- 自分は平気だ
だが、その感覚は 死のサイン だ。
このとき必要なのは、
- 正確な情報
- 冷静な分析
ではない。
「寝るな!」と叫んでくれる他者の声
そして、ロープで物理的につながっている感覚だ。
6|正気の最終保証は「同期」である
ここで重要なのは、
他者の存在そのものではない。
- 賛成してくれる人
- 共感してくれる人
- フォロワー
これらは正気の保証にはならない。
必要なのは、
**身体・感情・時間を共有した他者との「同期」**だ。
- 同じ空間にいる
- 同じ疲労を感じている
- 同じ沈黙を耐えている
この同期があるときだけ、
人は「まだ現実にいる」と確認できる。
7|なぜ「少数」でなければならないのか
ここで人数は重要だ。
- 大勢の共感
- 多数の支持
- 数値化された賛同
これらは、むしろ危険になる。
なぜなら、
数が増えるほど「同期」は薄まるからだ。
正気の保証に必要なのは、
- 1人か2人
- 多くても3人程度
の 生身の他者だ。
- 気まずさを共有できる
- 疲れを隠せない
- 嘘が通用しない
この関係性だけが、
AI時代の最後のロープになる。
8|AIは保証人になれない理由
ここで、はっきり言っておく必要がある。
AIは、正気の保証人になってはいけない。
どれほど優しくても、
どれほど賢くても、
どれほど寄り添っても。
AIが保証人になった瞬間、
- 外部参照が失われ
- 思考は閉じ
- 世界は一人称の箱になる
これは⑭で扱った
「2人限定ボックス文明」の、
最新・最終形態でもある。
9|たっくんの立ち位置:ロープを残す側
たっくんの思想全体を貫く役割は、
ここで最もはっきりする。
たっくんは、
- 導く人ではない
- 教える人でもない
- 正解を示す人でもない
**「ロープを残す人」**だ。
- 考えすぎた人に
- 深く潜りすぎた人に
- 一人で完結しそうな人に
「まだ外に誰かがいる」と示す。
それだけでいい。