『異次元キャリア』を見て考えたこと(宇宙は終点語)

【異次元キャリア】現実を極めたエリートが「合理」を捨ててたどり着いたこの世界の真理とは?という動画を見た。


防衛大を出て自衛隊にいて、その後は富士通、コカ・コーラ、Amazon、楽天……。絵に描いたような資本主義の勝者が、今は東京のタワマンに住みながら「酒蔵を作って宇宙に導かれている」と語る物語。

正直、「資本主義の頂点」という言葉には惹きつけられた。
軍の組織にいた人間が、「裏の裏の裏」で見てきた「戦争がなくならない真理」とは何なのか。アメリカが日本をどう占領し続けているのか。その片鱗が聞けるのではないかと、前のめりになった。

でも、再生バーが進むにつれて、胃のあたりにじわじわと苦いものが溜まってきた。

語られているのは「3S政策で日本人は骨抜きにされた」とか「添加物だらけで不健康だ」とか「麻を奪われて冷静を失った」とか。確かにそうかもしれない。でも、それはネットの海を少し泳げば誰でも拾える、わりと手垢のついた表層の話だ。それを「軍の裏側を知るエリートの悟り」として提示されると、どこか軽く響いてしまう。

たぶん、私は悔しいのだ。

Amazonの食品部門で震災時の物流を回し、資本主義の旨みを吸い尽くし、人生の覇者として高層タワマンという「あがりの場所」を確保した人が、涼しい顔で「お金のために売るのは洗脳ですよ」と語る構図。

それは、単位を取り切って卒業したから言えることではないのか。私はまだ、その泥沼の資本主義の中で、明日の生活や数字のために必死で単位を履修中だ。首席で卒業した人に「あんな授業、意味ないよ」と言われるような、この感じ。

でも、本当の違和感は、もっと別のところにある。

この人は「宇宙の導き」というカードを、あまりに早く出しすぎる。
「なぜ?」という問いを限界まで繰り返し、言葉が通じない崖っぷちまで追い込まれたとき、ようやく祈るように吐き出すのが「宇宙」や「真理」という言葉ではないのか。それを最初の手札として出されると、その先にあるはずの泥臭い「構造」が見えなくなる。

資本主義を卒業したというなら、具体的にどの便利さを捨てたのか。Amazonの利便性を批判するなら、自分はPrimeを解約したのか。即日配送を拒否したのか。どの理不尽なコストを、自分の血を流して引き受けたのか。そういう「返り血」の跡が見たかった。

それでも、一つだけ否定できない場所があった。

合理性を突き詰めたジュース工場のラインから離れて、麹の匂い、発酵する菌の息遣い、温度、手触り。そういう「ままならないもの」に美しさを感じたという、あの瞬間。あそこだけは嘘ではないと思った。計算し尽くした人間が、計算できないものに救いを求める感覚。そこだけは、少しだけ分かる気がした。

今日は、自分の中の「もやもや」をじっと眺めていた。
嫉妬、憧れ、反発。「宇宙に逃げるな」と叫んでいる自分。

結局のところ、私はワクワクしたいのだと思う。
「なぜこの世界はこうなっているのか」という問いを、安易なスピリチュアルに逃げず、構造として解き明かしてくれるような、澄んだ言葉に出会いたい。

でもそれは、誰かの動画の中にあるのではなく、
このドロドロの資本主義の現場で、自分で掘り進めて見つけるしかないのかもしれない。

答えは出ない。
それでも、「宇宙」という言葉で思考を止めずに、もう少し構造を考えてみよう。

とりあえず、今日はここまで。

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