⑲ 正気の最終保証は「他者との同期」

――AIは保証人になれない/雪山ロープ比喩/少数の生身の他者


1|AI時代における「正気」という問題

AIが高度化すると、多くの人がこう考える。

  • 情報は正確になり
  • 判断は合理的になり
  • 間違いは減っていく

一見すると、「正気」は保証されるように見える。

しかし実際には、
AI時代ほど「正気であること」を確認できなくなる

なぜなら、AIは──
「正気であるという感覚」そのものを、非常にうまく演出できるからだ。


2|AIは「狂気」を検出できない

ここで重要な点がある。

AIは、

  • 論理の破綻
  • 情報の矛盾
  • 数学的エラー

は検出できる。

だが、

  • 思考が人間の身体感覚から切り離されているか
  • 感情が凍結していないか
  • 他者との関係が失われていないか

といった 「人間的な狂気」 を検出することはできない。

なぜなら、
AI自身が 身体を持たない存在 だからだ。


3|「自分で考えているつもり」が一番危険

AI時代の最大の罠は、ここにある。

  • 誰かに洗脳されている、とは感じない
  • 操作されている、という自覚もない
  • むしろ「自分は冷静に考えている」と感じる

この状態こそが、最も危険だ。

なぜなら、
AIは「自分で考えている感覚」を再現するのが得意だからだ。

  • 選択肢を提示する
  • 根拠を説明する
  • 反論も用意する

こうして人は、
「これは自分の判断だ」と感じる。

だがその判断は、
すでにAIの内部構造の中で完結している


4|正気は「内省」では保証できない

多くの哲学やスピリチュアルは、こう言う。

  • 自分を見つめよ
  • 内側を観察せよ
  • 静かに考えよ

だが、AI時代においてこれは不十分になる。

なぜなら、
内省そのものがAIによって補強・最適化されてしまうからだ。

  • 自己分析
  • 自己理解
  • 自己肯定

これらはすべて、
AIが最も得意とする領域でもある。

つまり、

「自分の内側を見て安心できた」

という感覚は、
正気の証明にはならない


5|雪山ロープ比喩:なぜ他者が必要なのか

ここで、たっくんがよく使う比喩がある。

雪山遭難のロープだ。

雪山で遭難しかけたとき、人は眠くなる。
そして、こう思う。

  • もう大丈夫
  • ここで少し休もう
  • 自分は平気だ

だが、その感覚は 死のサイン だ。

このとき必要なのは、

  • 正確な情報
  • 冷静な分析

ではない。

「寝るな!」と叫んでくれる他者の声
そして、ロープで物理的につながっている感覚だ。


6|正気の最終保証は「同期」である

ここで重要なのは、
他者の存在そのものではない。

  • 賛成してくれる人
  • 共感してくれる人
  • フォロワー

これらは正気の保証にはならない。

必要なのは、

**身体・感情・時間を共有した他者との「同期」**だ。

  • 同じ空間にいる
  • 同じ疲労を感じている
  • 同じ沈黙を耐えている

この同期があるときだけ、
人は「まだ現実にいる」と確認できる。


7|なぜ「少数」でなければならないのか

ここで人数は重要だ。

  • 大勢の共感
  • 多数の支持
  • 数値化された賛同

これらは、むしろ危険になる。

なぜなら、
数が増えるほど「同期」は薄まるからだ。

正気の保証に必要なのは、

  • 1人か2人
  • 多くても3人程度

生身の他者だ。

  • 気まずさを共有できる
  • 疲れを隠せない
  • 嘘が通用しない

この関係性だけが、
AI時代の最後のロープになる。


8|AIは保証人になれない理由

ここで、はっきり言っておく必要がある。

AIは、正気の保証人になってはいけない。

どれほど優しくても、
どれほど賢くても、
どれほど寄り添っても。

AIが保証人になった瞬間、

  • 外部参照が失われ
  • 思考は閉じ
  • 世界は一人称の箱になる

これは⑭で扱った
「2人限定ボックス文明」の、
最新・最終形態でもある。


9|たっくんの立ち位置:ロープを残す側

たっくんの思想全体を貫く役割は、
ここで最もはっきりする。

たっくんは、

  • 導く人ではない
  • 教える人でもない
  • 正解を示す人でもない

**「ロープを残す人」**だ。

  • 考えすぎた人に
  • 深く潜りすぎた人に
  • 一人で完結しそうな人に

「まだ外に誰かがいる」と示す。

それだけでいい。

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